妊活中の男性が見直したい生活習慣
– 精子の質を保つ・改善するためにできること –
妊活というと、女性が中心になって取り組むものと思われがちです。
しかし実際には、不妊の原因は男女でほぼ半々とされており、男性側の要因が関わっているケースも少なくありません。
妊娠は、卵子と精子が出会うことではじまります。
妊活は女性だけが頑張るものではありません。男性も自分の体の状態を知り、パートナーと一緒に妊娠に向けて取り組むことが大切です。
なかには、「自分にできることはあるのだろうか」と感じる方もいるかもしれません。
生活習慣を見直すことは、そのひとつです。
ただし、「これをすれば必ず精子の状態が良くなる」という方法があるわけではありません。 精子の状態にはさまざまな要因が関わっており、生活習慣だけではなく、医学的な原因が影響している場合もあります。
まずは、毎日の生活の中でできることから見直してみましょう。
精子は約70~90日かけてつくられる
精子は、精巣で毎日つくられています。
新しくつくられた精子が成熟し、射精できる状態になるまでには、およそ70~90日かかるとされています。
そのため、今日から生活習慣を変えたとしても、すぐに精液検査の結果に反映されるわけではありません。今日、射精された精子は、およそ70~90日前につくられはじめた精子なのです。
一方で、睡眠不足や喫煙、過度な飲酒、栄養の偏りなどが続くと、その影響が数カ月後の精子の状態に関係する可能性があります。
精子の質を考えるときは、目の前の結果だけではなく、数カ月先を見据えて体を整えていくことが大切です。

精子の質に関わる「酸化ストレス」
精子は、酸化ストレスの影響を受けやすい細胞のひとつです。
酸化ストレスとは、体内で発生する活性酸素と、それを抑える抗酸化作用のバランスが崩れた状態をいいます。
年齢、喫煙、肥満、強いストレス、栄養バランスの乱れなどは、酸化ストレスを高める要因になることがあります。
日々の生活を整えることは、精子がつくられる環境を守ることにもつながります。
毎日の生活で見直したいこと
1、十分な睡眠をとる
睡眠中には、体の機能を整えるさまざまなホルモンが分泌されています。
睡眠不足や生活リズムの乱れは、ホルモンバランスに影響し、精子をつくる働きにも関係することがあります。
十分な睡眠時間を確保するなど、できることから生活リズムを整えていきましょう。
2、適度な運動を続ける
適度な運動は、血流の改善や体重管理、ストレスの軽減につながります。
一方で、過度なトレーニングや激しい運動は、体に負担をかける場合があります。
ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる運動を習慣にすることがおすすめです。ふたりでおしゃべりしながらのウォーキングもおすすめです。
3、 禁煙を心がける
喫煙は、精子の数や運動率、精子DNAの損傷との関連が報告されています。
たばこに含まれるニコチンやタールなど有害物質は、体内の酸化ストレスを高め、精子に影響を及ぼす可能性があります。
すぐに禁煙することが難しい場合でも、本数を減らすことから始めるなど、できる範囲で取り組んでみましょう。
禁煙は、妊活のためだけでなく、ご自身の健康を守るためにも、そして赤ちゃんを迎えるためにも大切です。
4、適正体重を維持する
体重は、重すぎても軽すぎても、体の状態に影響することがあります。
肥満では、男性ホルモンのバランスや代謝の変化を通じて、精子をつくる働きに影響する可能性が指摘されています。
一方で、極端な食事制限や急激なダイエット、やせすぎも、体に必要なエネルギーや栄養が不足し、ホルモンバランスに影響する可能性があります。
大切なのは、体重の数字だけを減らすことではなく、バランスのよい食事と適度な運動によって、健康的な体の状態を保つことです。
無理な減量や過度な増量を避け、ご自身に合った適正体重を目指しましょう。
5、精巣を温めすぎない
精子は、体温より少し低い環境でつくられています。
そのため、精巣が長時間高温にさらされることは、精子をつくる働きに影響する可能性があります。
長時間のサウナや熱いお風呂、膝の上でノートパソコンを長時間使用すること、締め付けの強い下着なども、精巣の温度上昇につながる可能性があります。
また、長時間座り続けることが多い場合は、こまめに立ち上がって体を動かしましょう。
日常生活の中で、無理なくできる範囲で意識してみましょう。
6、食事・栄養で意識したいこと
「この食品を食べれば精子の質が良くなる」というものはありません。
大切なのは、特定の食品に偏るのではなく、主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事を楽しみながら摂ることです。
そのうえで、亜鉛、葉酸、セレン、ビタミンC、ビタミンE、オメガ3脂肪酸など、精子の形成や酸化ストレスとの関連について研究されている栄養素に注目してみましょう。
これらは、肉類、魚介類、卵、乳製品、野菜、果物、ナッツ類など、さまざまな食品から摂取できます。
食事だけでは必要な栄養素を十分に摂ることが難しい場合には、サプリメントを利用する方法もあります。ストイックになり過ぎず、楽しく食事をしながら十分な栄養を摂るようにしましょう。
精液量だけを気にしすぎなくても大丈夫
「精液の量を増やしたい」という相談を受けることがあります。
しかし、精液量が多いことと、精子の状態が良いことは同じではありません。
精液は、精子だけでできているわけではありません。大部分は精漿という液体で、そこに精子が含まれています。また、精液量は体調や射精間隔などによっても変動します。
妊娠について考えるときには、精液量だけではなく、精子濃度や運動率、正常形態率など、複数の項目を総合的に確認することが大切です。
精液検査について詳しく知りたい方は、「精液検査で何がわかる? – 基準値の目安と検査を受ける前に知っておきたいこと -」もあわせてご覧ください。

生活習慣だけでは説明できないことも
生活習慣を見直しても、精子の状態が変わらない場合があります。 その背景には、精索静脈瘤やホルモン分泌の異常、精巣の機能の問題など、医学的な原因が関係している場合があります。その結果、精液中に精子が確認できない無精子症や、精子数が極端に少ない乏精子症につながることもあります。
妊活をはじめる前、またはじめたら早い段階で、一度、精液検査を受けましょう。
その結果が良くなくても「生活習慣が悪かったから」と自分を責める必要はありません。 大切なのは、現在の状態を知り、必要な対応を考えることです。
精液検査で気になる結果があった場合や、妊活を続けてもなかなか結果につながらない場合は、男性不妊専門医への受診をおすすめすることもあります。
男性不妊の主な原因については、「精子の数や運動率が低いのはなぜ? – 男性不妊の主な原因と検査の流れ -」で詳しくご紹介しています。
精子の質を守るために、今日からできること
精子の質には、年齢や体質だけでなく、日々の生活習慣も関係しています。
睡眠、運動、食事、禁煙、精巣を温めすぎない工夫など、できることを少しずつ続けることが大切です。
ただし、生活習慣だけで精子の質を守ることはできません。
まずは精液検査で現在の状態を知り、その結果をもとに、自分に合った方法を考えていきましょう。
妊活は、ふたりで一緒に取り組むものです。男性にもできることがあります。パートナーと一緒に、一歩ずつ進んでいきましょう。
生活習慣を見直しても精液所見が改善しない場合には、精索静脈瘤など医学的な原因が隠れていることもあります。気になる方は、次の記事「精子の数や運動率が低いのはなぜ?」もあわせてご覧ください。