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コラム
2026.08.18

胚とのお別れ、その決断に後悔を残さないために。

胚とのお別れ、その決断に後悔を残さないために。

こんにちは。
よしひろウィメンズクリニック胚培養士の小野寺です。

今日は、患者様に少し早めにお伝えしたいご報告があり、ブログを書かせていただきました。まだ日程などは決まっていないのですが、私たちがずっと温めてきた想いが、ようやく一つのかたちになりそうなので、経緯も含めてお話しさせてください。

最初に、大切なことをお伝えさせてください。今回のお話は、「凍結している受精卵をどう扱うか、判断がつかずにいる方」だけのものではありません。

胚移植を行ったものの着床に至らなかった方、そして受精卵が凍結の段階まで進まず、治療にひと区切りをつけられた方にも、関わるお話です。

当院では、凍結からの保存期間(1年)を過ぎますと、更新を行わない限りは規定に基づき受精卵は廃棄となります。ですので「自分の受精卵が、まだどこかに残っているのだろうか」とご心配いただく必要はありません。

今回ご報告するのは、すでに廃棄された、これから廃棄を迎える、あるいは妊娠に至らなかった、そうした出来事に対して、患者様おひとりおひとりが心に区切りをつけるための機会についてのお話です。

「受精卵が棄てられない」という声

胚培養士という仕事は、患者様からお預かりした大切な卵子と精子を受精させ、育て、そしてお戻しする、命の入り口に立ち会う仕事です。その中で、治療の節目節目に、患者様から「凍結している受精卵を、どうしても棄てる決断ができない」というお声をいただくことが、これまでも何度もありました。

医学的には「ヒト」ではなくても、患者様ご自身にとっては、我が子と同じように大切な存在であること。私はそのことを、この仕事を通じてずっと感じてきました。

2022年、情報発信活動をしていたご縁で、この「受精卵棄てられない問題」について取材を受ける機会がありました。(※)

その後、この問題をテーマに作品を制作されている芸術家の方とも出会い、完成した作品を実際に見に行かせていただいたときのことは、今でもよく覚えています。「受精卵を一つの命として扱うこと」については様々なご意見があると思いますが、私はそこに深く心を動かされ、医療に携わる者として何かできることはないだろうかと、ずっと考えるようになりました。

また、私自身、出身は山形県酒田市で、家族の葬儀の際に納棺師の方がひとつひとつの所作を丁寧に、心を込めて行ってくださる姿を間近で見た経験があります。その時感じた「見送るということの大切さ」が、今回の取り組みの原点にもなっています。

そうした想いを胸に、この度、社会貢献を目的とする法人として、ご縁のあるお寺様にご協力いただき、皆様の大切な胚の供養を執り行っていただけることになりました。

凍結容器ごとお持ちすることは叶いませんが、法事のような形で、丁寧にお見送りをしていただけることになります。
それでも「供養していただける」ということ自体が、私たちにとっては何より有難いことだと感じています。

どなたにも、区切りをつける機会を

冒頭でもお伝えした通り、この機会は「棄てられない」というお気持ちを抱えている方だけのものではありません。

不妊治療を経て、お子様に恵まれなかった。そのことをずっとお一人の心の中にしまったまま、日々の生活を送っていらっしゃる方も、決して少なくないと思います。悲しみや悔しさ、様々な感情に、区切りをつける機会がないまま、時間だけが過ぎてしまうこともあるかもしれません。

また、受精卵が凍結の段階まで進まず、治療にひと区切りをつけられた方の中にも、同じように大切な気持ちを抱えていらっしゃる方がいらっしゃると思います。この機会は、そうした方にも開かれたものにしたいと考えています。

この機会が、そうした患者様にとって、ご自身の治療と向き合った日々を振り返り、少しでも心を整理して、これからの人生を明るく歩んでいくための、小さなきっかけになればと願っています。

参加にあたって

現時点で決まっている概要を、少しだけご案内します。

  • 開催方法:私たちがお寺様に直接出向き、その場で供養を執り行っていただきます。ご希望の患者様にも、ご一緒にご参列いただけます。
  • 費用:患者様にご負担いただく費用はございません。
  • 院長・スタッフについて:当日は院長や社団のスタッフも同行する予定です。日頃なかなかゆっくりお話しする機会のない院長やスタッフと、顔を合わせられる機会になるかもしれません。
  • お子様の同伴について:会の趣旨や場の性質上、大変申し訳ございませんが、お子様のご参加はご遠慮いただけますと幸いです。同じ立場の患者様同士が、安心して静かに気持ちと向き合える時間にしたいという想いからのお願いですので、どうかご理解いただけますと幸いです。

今後について

現在のところ、次回の予定などはまだ決まっておりません。
しかしながらこのような貴重な機会を続けていけたらと、我々は考えております。

治療の過程で生まれた大切な想いに、少しでも寄り添える場をつくれるよう、これからも準備を進めてまいります。決まりましたら、また改めてご報告いたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(※)参考記事:
「受精卵が棄てられない」。医学的に「ヒト」ではない、でも本人には「命」にも匹敵する卵。不妊治療を経て悩む当事者15名と、胚培養士の声を聞く<前編>

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