体外受精にはどんなリスクがある?
– 安心して治療を受けるために、知っておきたいこと –
体外受精は、妊娠を望むカップルにとって大切な治療の選択肢の一つです。
一方で、治療には、知っておきたいリスクもあります。
「体外受精は怖いのでは?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
でも、リスクを知ることは、治療を怖がるためではありません。
どのようなことが起こり得るのかを知り、必要な対策を知ったうえで、自分に合った治療を選ぶために大切なことです。
ここでは、体外受精で知っておきたい主なリスクについて説明します。
採卵に伴う出血や感染など
採卵では、腟から細い針を入れて卵巣から卵子を採取します。そのため、採卵後に少量の出血や痛みがみられることがあります。また、まれに出血が多くなったり、感染を起こしたりするなどの合併症が起こる可能性もあります。
採卵の際には静脈麻酔などを使用することが多く、血圧低下や吐き気、呼吸抑制といった麻酔の副作用が起こる可能性もあります。当院では、表面麻酔に加えてエコーガイド下局所麻酔を組み合わせた「Y.W.Cペインレス麻酔法」を導入しているため、痛みや麻酔への不安を抑えながら採卵を受けていただけます。
採卵時の痛みや、処置に伴うリスクについては、こちらで詳しく紹介しています。【関連記事】
「採卵って痛い? どこが痛む? 採卵の流れと痛みについて」
卵巣刺激によるOHSS
体外受精では、複数の卵胞を育てるために卵巣刺激を行います。その際、卵巣が過剰に反応すると、卵巣が腫れたり腹水がたまったりする「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」が起こることがあります。
OHSSは症状が強くなると治療が必要になる場合もありますが、卵巣の反応を確認しながら刺激方法や薬剤を調整することで、リスクを抑えることができます。
卵巣刺激の方法やOHSSについては、こちらで詳しく紹介しています。
【関連記事】
「卵巣刺激って怖くない? 副作用やOHSSについて」
妊娠したあとにも、知っておきたいリスク
妊娠後に起こるリスクには、母体や子宮の状態、年齢や妊娠前の健康状態、不妊の背景など、さまざまな要因が関係しています。
そのため、「体外受精だから危険」と一括りにするのではなく、一人ひとりの状態に応じて妊娠後の経過を見ていくことが大切です。
■ 妊娠初期に起こること
妊娠初期には、出血や腹痛などがみられることがあります。こうした症状があっても、必ずしも流産につながるわけではありません。症状や超音波検査などから、妊娠の経過を確認していきます。
「切迫流産」は、出血や腹痛などがあるものの、妊娠が継続している状態をいいます。また、妊娠22週未満で妊娠が終了することを「流産」といいます。
流産の原因はさまざまですが、妊娠初期の流産の多くは、胚の染色体異常など、妊娠した時点ですでに決まっている要因によるものとされています。
また、胚を子宮内に移植しても、まれに子宮以外の場所に着床する「異所性妊娠」が起こることがあります。
そのため、妊娠判定が陽性になったあとも、超音波検査で胎嚢の位置を確認する必要があります。妊娠5〜6週頃までに胎嚢の位置が確認できなかった場合、超音波検査と血液検査を数日間にわたって繰り返しながら、位置を特定していくことがあります。
腹痛や出血など、気になる症状がある場合には、早めに医療機関へ相談することが大切です。
■ 妊娠中期以降に起こること
妊娠22週以降37週未満で出産することを「早産」といい、その可能性が高い状態を「切迫早産」といいます。
お腹の張りや痛み、出血、破水などがみられることがあり、症状がある場合には早めの受診が必要です。
切迫早産と診断された場合は、妊娠週数や症状、子宮頸管の状態などを確認しながら、必要な処置や経過観察を行います。
早産には、母体の状態や感染、子宮や胎盤の状態など、さまざまな要因が関係しています。
■ 妊娠中に起こる合併症
妊娠中には、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、前置胎盤、常位胎盤早期剥離など、妊娠をきっかけに発症したり、妊娠によって悪化したりする病気があります。
こうした妊娠合併症には、体外受精だけでなく、年齢や妊娠前の健康状態、既往歴など、さまざまな要因が関係しています。
また、多胎妊娠では、こうした妊娠合併症が起こる確率が高くなることがわかっています。そのため、ママや赤ちゃんへの負担を考慮し、移植する胚の数についても慎重に検討します。
体外受精で妊娠した場合も、妊娠後は定期的な妊婦健診を受け、ママと赤ちゃんの状態を確認していくことが大切です。

生まれてくる赤ちゃんへの影響は?
体外受精を考えるとき、「治療によって、生まれてくる赤ちゃんに何か影響があるのでは?」と心配になる方もいるでしょう。しかし、体外受精で生まれた子どもについて、先天異常などの発生率が自然妊娠と比べて大きく異なるとはされていません。
ただし、子どもの健康には、治療方法だけでなく、母体の年齢や不妊の原因など、さまざまな要因が関係します。
体外受精だからといって必要以上に心配するのではなく、気になることがあれば医師に確認しておきましょう。
体外受精は、
赤ちゃんを迎えるための方法のひとつ
体外受精は、妊娠を望むカップルが、赤ちゃんを迎えるために選択する方法のひとつです。
その一方で、治療には知っておきたいリスクがあります。ただ、リスクがあるからといって、体外受精が「怖い治療」ということではありません。
大切なのは、どのようなリスクがあるのか、自分にはどのようなリスクが考えられるのか、そして、そのリスクを抑えるためにどのような方法があるのかを知ることです。
そのうえで、医師と相談しながら、自分に合った治療方法を選んでいきます。治療について不安なことやわからないことがあれば、遠慮せずに医師に相談してください。
リスクを正しく知ることは、不安を大きくするためではなく、納得して治療を選ぶための一歩です。