胚移植はどんなことをする?移植方法の種類や手順、移植後の症状などを解説
胚移植は、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)で培養した受精卵を子宮に戻す、不妊治療の最終段階にあたる大切な工程です。しかし「痛みはあるの?」「どんな方法があるの?」「移植後はどんな症状が出る?」など、不安や疑問を感じる方も少なくありません。
この記事では、胚移植で実際に行うことや移植方法の種類、当日の流れ、移植後に起こりやすい症状までを、初めての方にも分かりやすく解説します。
胚移植とは
胚移植とは、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)で受精・培養した受精卵(胚)を子宮内に戻す治療です。
採卵で得た卵子は精子と受精させ、数日間培養して発育の状態を確認します。その中から、成長が良好な胚を選び、細いカテーテルを使って子宮に戻します。処置は数分で終わり、痛みはほとんどありません。多くの場合、麻酔は不要で、日常生活への影響も少ないのが特徴です。
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胚移植には、採卵と同じ周期に行う「新鮮胚移植」と、いったん凍結保存した胚を別の周期に戻す「凍結融解胚移植」があります。どちらの方法が選択されるかは、子宮の状態や本人の希望、クリニックの方針により選ばれます。(※なお当院では、「凍結融解胚移植」を主に行っています。)
ここからは新鮮胚移植と凍結融解胚移植の特徴を説明します。
新鮮胚移植とは
新鮮胚移植とは、採卵した周期の中で、体外で受精・培養した凍結していない胚(受精卵)を凍結させずにそのまま子宮に戻す方法です。
採卵後に卵子と精子を受精させ、数日間培養して発育を確認します。その周期の子宮内膜の状態が良好で体調にも問題がなければ、採卵から数日後にそのまま胚移植を行います。処置は短時間で、痛みもほとんどありません。
新鮮胚移植は、移植までの治療期間が短く、早く妊娠の可能性に進める点がメリットです。一方、卵巣刺激の影響でホルモンバランスが乱れている場合は、着床しにくくなることがあります。そのため、体の状態によっては胚を凍結し、別の周期に移植する方法が選ばれることもあります。
凍結融解胚移植とは
凍結融解胚移植とは、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)で受精・培養して育てた受精卵(胚)をその周期では移植せず、いったん凍結保存して状態を整えたのちに別の周期に子宮へ戻す方法です。
採卵後に受精・培養した胚のうち、状態の良いものを凍結してホルモン値や子宮内膜の状態が整った周期に移植を行います。卵巣刺激の影響を受けないため、子宮内膜が安定しやすく、新鮮胚移植に比べて着床に効果的であるのが特徴です。
移植自体は細いカテーテルで行うため、痛みはほとんどありません。
凍結融解胚移植には、排卵に合わせて行う「自然周期」と、ホルモン剤で内膜を整える「ホルモン補充周期」があり、体調やライフスタイルに合わせて選択されます。
新鮮胚と凍結胚、妊娠率が高いのはどっち?
新鮮胚移植と凍結融解胚移植は、凍結胚の方が妊娠率が高いと言われています。その理由は、凍結融解胚移植の方が子宮の環境が整いやすいことや胚の質をしっかりと見極められることなどが挙げられます。
日本産婦人科学会の調査によると、それぞれの周期の生産分娩の割合として以下のようなデータが出ています(2022年のデータ)。
- 新鮮胚移植:1.7%(4,883/279,218)
- 凍結融解胚移植:6.6%(70,289/264,412)
出典:Q16.生殖補助医療の治療成績はどの程度なのですか?|日本生殖医学会
このため、当院の胚移植では「凍結融解胚移植」のみを行っています。4年間の実績として、30〜39歳の胚移植1回あたりの妊娠率は60%(2020年〜2023年の計2515症例)です。
胚移植当日の手順
胚移植当日は以下のスケジュールで進めます。
- 処置室に入室:氏名・生年月日・移植する胚を確認
- 診察:超音波で子宮の状態を確認
- 移植:超音波を使い、カテーテルを使って融解した胚盤胞を移植(所要時間5~10分)
- 終了:会計を済ませて帰宅
胚移植後は安静の必要はなく、お会計後にそのまま帰宅できます。当院では自然妊娠と同じ原理で移植後の生活に制限を設けておりません。リラックスしていつも通りお過ごしください。
なお、当院ではBT10〜14で妊娠判定を行っています。判定日までに気になる症状等ありましたら、当院までご連絡ください。
よしひろウィメンズクリニックの凍結融解胚移植の当日の流れの詳細は以下をご確認ください
胚移植後の症状
胚移植後は、以下のような症状がみられることがあります。軽い症状であれば数日で落ち着く場合がほとんどですが、症状が強くなったり続いたりする場合は、迷わず通院しているクリニックにご連絡下さい。
症状の例
- 腹痛:子宮の収縮があった場合により起こりやすくなります
- 出血:移植後2~3日は少量の出血がみられることがあります
- 蕁麻疹:移植で使用する薬剤の影響で蕁麻疹が出ることがあります
- 胸の張り、眠気、倦怠感、便秘:使用するホルモン剤の影響
移植から妊娠判定までは、不安な気持ちで過ごす方が多く些細な症状にも敏感になってしまうでしょう。移植後の症状は個人差が大きく、ホルモン補充周期では薬の影響でいつもとは違った症状が見られる場合があります。
例えば、激しい下腹部痛や月経のような大量の出血がある場合、38度以上の発熱がみられる場合や、移植後の症状が強い場合は自己判断せずクリニックを受診しましょう。
胚移植後の日常生活の過ごし方と注意点

胚移植後は基本的には大きな制約はなく、いつも通り生活して問題ありません。当院でも特別な制約を設けておらず、妊娠判定までリラックスしてお過ごしいただくようお伝えしています。
しかし、中には胚移植後の過ごし方が気になる方もおられるでしょう。現状、胚移植後の過ごし方に関するエビデンスは限られていますが、一般的に避けた方が良いとされる行動はあります。ここからは胚移植の過ごし方と注意点を紹介します。
運動・仕事
基本的に胚移植後の適度な運動に制限はありません。リラックスのためや体力向上のためのヨガやストレッチ、ウォーキングなどは続けていただいても問題ないでしょう。
反対に1日中ベッドやソファーで横になるような過度な安静は現在ではあまり推奨されていません。適度な運動は血行を良くし、妊娠しやすい体づくりにも役立ちます。
食事
移植後の食生活で気になるのがアルコールの摂取です。妊娠すると飲酒は制限されるため、移植後から控えた方が良いでしょう。
移植後を含め、不妊治療中は栄養バランスの整った食事を意識しましょう。ビタミンDや葉酸、カルシウム、亜鉛などを意識しつつ、不足しているものはサプリメントを活用してみるのも選択肢です。
入浴・サウナ
胚移植当日は、出血による感染症のリスクがあることから、シャワーを推奨される場合もあります。翌日からは医師の指示がない限りは、入浴して問題ない場合も多いです。サウナについては心配であれば避けた方が無難ですが、医師の指示に従いましょう。
まとめ
胚移植には新鮮胚移植や凍結融解胚移植など複数の方法があり、体の状態や治療経過に応じて選択されます。手技自体は短時間で体への負担も比較的少ない一方、移植後の体調変化や過ごし方に不安を感じる方も多いでしょう。
正しい知識を持つことで、過度な心配を減らし、落ち着いて治療に臨むことができます。不安な点は一人で抱え込まず、医師や医療スタッフに相談しながら進めていくことが大切です。